パルクールとは?
パルクールは特別な器具は一切使わず、走る、跳ぶ、登る、ぶら下がる、乗る、転がる、 回る、バランスを取るなどの動作を用いながら、体一つで様々な状況や環境に適応して動 く事により心身の強さや人間が本来産まれながら持っているはずの潜在能力を引き出して いくトレーニング文化です。
パルクールの歴史
パルクールの起源は第一次世界大戦まで遡り、Georges Hebert (ジョルジュ・エベル) 海軍 将校によって作られ、フランス軍のトレーニングとして画期的に取り入れられていた Methode Naturelle (ナチュラル・メソッド) が元になったとされています。Methode naturelle は歩く、走る、跳ぶ、這う、登る、バランスをとる、投げる、持ち上げる、自衛 する、泳ぐなどの10種の基礎的運動群から成り立つトレーニングでしたが、後にこのメ ソッドをベースに作られた障害物コース軍事訓練 Parcours du combattant (パルコース・ デ・コンバタント) が誕生し、フランスの軍隊や消防団などに積極的に用いられるように なりました。
パルクール (Parkour)は元々 l’Art Du Déplacement/ADD (動きの芸術) と呼ばれ Parcoursdu combattant のトレーニング方法から影響を受けた『YAMAKASI (ヤマカシ)』と呼ばれ る若者達によりフランス、パリ郊外で1980年代に作られました。ヤマカシという言葉は リンガラ語で「強い魂を持った強い人間」という意味で元々は身体的、精神的そして道徳 的にも強い人間になる為にADDは実践されていました。初代ヤマカシはDavid Belle (ダ ビット・ベル), セバスチャン・フォーカン (Sebastien Foucan)、Yann Hnautra (ヤン・ハヌ トラ)、Chau Belle Dinh (チャ ウ・ベル・ディン) 、Laurent Piemontesi (ロワン・ピメント シ)、Guylain Boyeke (ガイラン・ ボヤケ)、Charles Perriere (シャルル・ピエール)、Malik Diouf (マリック・ディオフ) そしてWilliams Belle (ウィリアムズ・ベル) により構成 され、 この9人のヤマカシ達が後に『ADDの創始者』と呼ばれるようになります。
1998年に方向性の違いによりダビット・ベルとセバスチャン・フォーカンがヤマカシを 抜けADDとの違いを見せる為にダビットが『Parkour/パルクール』という言葉を作りま す。その為ダビッ ト・ベルがパルクールの創始者と呼ばれるようになりました。パルクー ル/Parkourはフランス語の『Parcours (道、コース)』という言葉から派生した物で、A地点 からB地点までの道のりを安全に素早く、機能的に、そして美しく移動する事に焦点を置いていました。またParkourという言葉には剣道や柔道の『道』みたく自分自身と向き合 うことにより自分独自の道を見つけて切り開いていくという意味があります。
物を跳び越えたり、跳び移ったり、登ったりなど特定の動きをすることがADD/パルクー ルと思われる事がありますが実はそうではではありません。ADD/パルクールには元々決 まった動きや技術は無く、また体操やクライミング、ダンスや陸上競技、格闘技などの動 きを取り入れた訳でもありません。ヤマカシを始めとする先人達が長年に渡り様々なチャ レンジを乗り越えて行く際に効率よく安全にチャレンジを乗り越える手段の一つとして、 また自己表現の為の新しい身体の使い方として様々な動きや技術が発見・開発されまし た。
ADDそしてパルクールは元々心身を鍛える為のトレーニングでしたが、その超人的な身体能力や美しいアクロバティックな動きがメディアの注目を浴び、文化がパリの一角から世 界的に注目されるきっかけになりました。1997年にStade 2というフランスニュース放映番組にヤマカシがチームとして特集され、その後1998年に世界的に成功した舞台である Notre Dame de Paris (ノートルダムのせむし男) にヤマカシのメンバーがメインキャストと して出演しました。その舞台での演技が世界的映画監督のLuc Besson (リュック・ベッソ ン) 監督の目に留まり、2001年に世界中にヤマカシの名前を広めるきっかけとなった映画 YAMAKASIが作られました。同年、イギリス放映局のCMにダビッド・ベルが出演し、イ ギリス全土の注目を浴び。この好反響をきっかけに、2003年にJUMP LONDON というパ ルクール・ドキュメンタリーがマイク・クリスティー監督により作られ、イギリスを始め 世界中のテレビ番組で放映されました。このドキュメンタリーが世界中にパルクールの名 を知らしめたと言っても過言では無いでしょう。
JUMP LONDONでは英語圏の人間にも概念が伝わりやすいように Freerunning (フリーラ ンニング) という名称が作られました。その後 JUMP LONDONに出演していたセバスチャン・フォーカンがパルクールの中でもより様々な動作を取り入れ自己表現のツールとして 自由に動く事に焦点を当てた物をフリーランニングと呼ぶようにしました。
その後YouTubeを始めとするソーシャルネットワークからの発信をきっかけに爆発的パルクールが世界中に広まる事になりました。現在パルクールは世界で最も競技人口が伸びて いる文化として知られています。
パルクールの考え方
『パルクールは自分のアタマとカラダを使ってチャレンジを乗り越える事』 物理的な障害物や状況などもそうですが、自己表現の為の想像的視点を持つ事や恐怖心に 打ち勝つ事など目に見えない事もチャレンジと言えると思います。
この障害物をどう乗り越えた方が良いか?
この動きをする為にはどうすれば良いのか?
目の前の目的/障害/チャレンジと向き合って、『問題』を解決していく事にパルクール の本質があります。
“Parkour” は元々フランス語で『道』や『ルート』を意味する “Parcourse”という言葉か ら作られていて、パルクールは様々なチャレンジを通して自分自信の為に『自分の道』を 見つけて、その道を極める事に本質があり、その道中に様々な発見や成長がある文化だと 思います。自分自身の肉体的、精神的な限界を知り、それらの限界を超えていく方法を探 していく、それこそがパルクールの真髄です。
パルクール哲学
“To be Strong to be Usuful/ 強く機能的で在れ”
パルクールは強さを求める文化です。 心身ともに強くなり、他人や社会の為の力になる事を目指します。
“Never give up/諦めない”
強さを求める上で諦めない心を持つ事が大事です。 自分の限界を知り、限界を超える為に試行錯誤します。
“To be and to last/自分らしく、ずっと”
自分が自分らしくあれるように自分の道を見つける事がパルクールです。そうある為に自 分としっかり向き合い、健康に自分らしく生涯パルクールをする事を目指します。
“We start together we finish together/皆で始めて、皆で終わる”
パルクールでは自分と向き合う事を通して他人と向き合い、自分を高めてくれる仲間の存 在を大切にします。一人で出来る事には限界があり、他人から学び、影響し合い切磋琢磨 する事により人としての成長があります。